福岡県下を対象とする緊急事態宣言の発出から明日で7日がたちます。

この間、私が地域を回らせて頂く中で耳にした声については、過去数回にわたりこのブログに書いてきました。日を追うごとに、国・県の会見に続いて福岡市が13日に打ち出した15億円の支援策は、十分ではないという思いが強くなっています。

きょうはタイトルの通り、生活困窮の状況について感じることを、公表されている資料からうかがい知れることと併せて書きたいと思うのですが、前段として、今回の2度目の緊急事態宣言後の新聞報道について気になっていたことから。

16日に時短営業の要請が発効しましたが、新聞各紙とも翌日の朝刊に、時短要請に従って店を早じまいする飲食店の様子と、経営者の反応を紹介して以降、目立った続報があるわけでもなく、「本当に緊急事態宣言下の紙面なのかな?」と毎朝首をかしげていました。良くも悪くも2度目。昨年の春先の緊急事態宣言時とは違って、メディアにも「慣れ」があるのだろうと感じます。いま拾わなければならない声がたくさんあるはずなのに…。

ある意味で、悶々とした心持ちで朝刊チェックをしていた中、今朝の西日本新聞に生活困窮に関連する2つの記事が掲載されました。1つはコロナ禍でアルバイトの収入を断たれた学生の苦悩。もう1つはコロナ離職を余儀なくされた若い男性が置かれた苦境。写真に収めた記事をそれぞれ掲載します。

文字が読める程度に写真を大きく掲載したので、時間のある方は是非とも目を通して頂きたいのですが、前者はアルバイトで生計を立てながら学んでいた学生さんがコロナ禍で働き口を失い、日々の生活が苦しくなっているケース。教員を目指す1人の女子短大生の事例が紹介されています。厳しい中でもしっかりと前を向いて頑張っているからこそ、「春信じて」の見出しになったのでしょうが、何の落ち度もない若者が突然の苦境に見舞われ、毎日どれだけ心細い思いの中で自分を鼓舞しながら暮らしているのかを想像すると、自由気ままで平穏だった私自分の学生生活とどうしても比べてしまい、もはや「罪悪感」としか表現しようのない後ろめたさを覚えます。

後者は33歳の男性の置かれた境遇。コロナ禍で働いていた会社の業績が悪化し、希望退職に応じたものの、借金返済などの問題から失業保険も生活費に回らず、市内のNPO法人が行った炊き出しを利用したとのこと。所持金600円。料金滞納で使えなくなった携帯を手にWifiのあるコンビニに行くと、誕生祝いのメッセージが家族から届いたという、あまりに切な過ぎる描写から、「楽に死ねる方法を何度も探した」という男性の心の闇が、恐ろしいほどリアルに迫ってきました。

生活困窮の状況については前々から気になっていたこともあり、公表されている資料をもとに、情報を集めてみました。生活困窮者向けの施策のうち、昨年春の緊急事態宣言以降で、申請数にかなり顕著な増加が見られたものの1つが「住居確保給付金」です。

元々はリーマンショック、或いは東日本大震災後の長期に渡る不況で職を失い、住宅の家賃が支払えなくなった人たちが、住居を失うことなく、また、生活保護に頼ることなく生活再建に取り組めるようにと設けられたもので、月々の家賃の一定額を国が肩代わりして大家さんに支払ってくれる制度でした。福岡市の令和元年の申請件数は63件、支給決定は47件でした。

しかし、去年の新型コロナウイルス感染症の流行を受けて、失業同然の状況にあるフリーランスの人たちなどが支給対象に加わったことから、昨年4月から12月までの新規申請が3421件、支給決定件数が2625件と、大幅に増えています。支給は基本3か月、延長と再延長が認められれば最長で9か月まで受けられることになっていましたが、今年の1月1日からは要件が厳しくレアなケースではあるものの、再々延長で12か月までの支給を受けることも可能になっていました。しかし、昨年4月にこの制度を活用し始めた人にとっては、再々延長の期限も令和3年の3月に迫っており、間もなく支援が途絶えることとなります。

一方、市内の生活保護の申請件数・受給決定件数はともに、令和2年と令和元年をトータルで比較したとき、コロナ禍による極端な増減は見られていません。これは、持続化給付金、雇用調整助成金や、国民1人当たり10万円などの各種給付が一時的に役立った可能性がある(もちろん、生活困窮世帯が貯蓄を減らしながら生活をつないでいることもあるでしょうが)ことに加えて、先ほど紹介した住居確保給付金、それに社協が窓口になっている生活福祉資金貸付制度(コロナ禍に合わせて要件を緩和し、申請・受給ともに急増)など、生活保護に陥らないために設けられた制度が、セーフティネットの役割を一定果たしたことも背景にあるのではないでしょうか。

しかし、生活困窮者の支援にあたる市の関係部署では、これから年度末にかけて、有期雇用の労働者が契約更新されずに大量に職を失うことがあれば、再びこれら「生活保護の手前のセーフティネット」の利用が急増するだけでなく、生活保護申請数の顕著な増加もあり得るのではないかという強い警戒感を持っています。

新年を迎え、確定申告の時期も近づいてきましたが、いま現在、国民の多くが令和2年の1年間の所得と、令和元年の1年間の所得を比較できる条件が整いました。とすれば、「令和元年の所得水準が高くなくて、かつ令和2年の所得が落ち込んでいる世帯をコロナ禍による生活困窮世帯と捉えて、対象を絞った現金給付を考える」ことなどは、全くできない話じゃないのでは?と思うのです。これは例えばの話ではありますが。昨日開会した国会では、何らかこうした視点での国の支援が議論されることを心から期待しますし、国がもしやらないのであれば、福岡市が独自にでも取り組んでもらいたいと願うものです。

きょう、この投稿において紹介した新聞記事のケースは、数多くある生活困窮事例のほんの一部だと思います。私が所属する自民党市議団は、アルバイトで生計を立てる学生の苦境、コロナ離職のどちらも、支援を要する課題であるという認識に立っていて、それゆえに、今月14日に市長に提出した自民党市議団の第4次提言(PDFファイルが開きます)には、「学生への貸付、給付制度の創設」や「給付つきの就職支援の実施」などの施策を盛り込みました。特に「失業と自殺」には明らかな相関性も指摘されているところであり、コロナ禍が長期化し社会全体に疲弊・心労が充満している中で、就職先や進路未定の学生が卒業を迎え、有期雇用者の大量解雇という最悪の事態も予見される年度末が迫っています。基礎自治体が果たすべき最も重要な役割は「市民の生命を守ること」です。雇用対策はいまこそ危機感をもって真剣に議論し、対応を打ち出さなければなりません。

明日は主に、こうした視点で記事を更新する予定です。