横浜市長選は今夜投開票され、4期目を目指した現職、地元選出で国家公安委員長の要職を辞して臨んだ自民党代議士らを破り、立民推薦の新人候補者が当選を確実にしました。
選挙戦終盤では、「誰も法定得票数(有効投票の4分の1以上)に届かず、決選投票になるのでは?」という報道も一部でありましたが、蓋を開けてみれば20時の投票締め切りと同時にテレビ各社が当選確実を打つ、「ゼロ当確」の圧勝劇でした。
この選挙の情勢と併せて既に報道された内容とも重なる部分があるかとは思いますが、横浜市長選で示された民意が今後どのようなことに影響するのか、思うところを記したいと思います。
・衆院総選挙への影響
横浜市は菅首相の出身選挙区です。お膝元で、同じく地元選出の大臣級自民党代議士を推して臨んだ選挙で敗れたことは、党総裁を兼ねる首相にとって、もちろん自民党にとっても、大きな痛手になると思います。
「痛手になる」という表現は、もしかすると正しくないのかもしれません。政権与党としては「現段階で既に、取り返しがつかないほどに民意の離反を招いた」と受け止めるべきではないでしょうか。任期満了が迫る衆議院の選挙情勢にも間違いなく影響すると思います。
中央の政治情勢はこれから慌ただしくなるのでしょう。個人的にはこれからの政局が政権与党にとって、「何が民意の離反を招いたのか」をしっかりと分析し、真摯に反省し、これから何をどう改めるのかを、国民・有権者にはっきりと示す機会になることを望みます。この期に及んで、みたむない権力闘争に明け暮れるようなことだけは、しちゃりやんな。
・IR誘致活動への影響
横浜市はいち早くIR誘致に名乗りをあげました。今回の市長選で、自民党の横浜市連の支援は、IR誘致を推進する現職と、慎重論を掲げた大臣級代議士との間で割れ、こうした対応が結果として明確に反対を訴えた立民の新人を利した感があります。
私自身、場所をしっかりと選ぶことは必要だと思いますが、IR自体は一般論として、新たな産業、雇用や税収を生む可能性があるものと認識しています。ギャンブル依存、周辺風紀の紊乱(びんらん)の恐れなど、大なり小なりの負の側面はあるのでしょうが、是非の議論すら初めから全否定してかかる立場ではありません。
しかしながら、国会議員のカジノ汚職事件が大きな話題になって以降、IR誘致に関して政治の場で賛成の立場を示すことは非常に難しくなったと感じます。福岡市に関して言えば、IR誘致を求める市民団体から要望活動もあっていますが(同様に反対する市民団体からの要望もあっています)、「誘致をする」と言い出すことはもちろんのこと、「誘致の是非を検討しよう」と言い出すことすら難しいというのが、現状と言えるのではないでしょうか。
誰でもみんなが知っているカード遊びに例えるならば、いまの状況は「ババ抜き」に似ているかと。
「IR誘致をすべき」「少なくとも誘致の是非は議論すべきではないか」と思っている政治関係者が、テーブルを囲んで「一体、誰が誘致を言い出すんだ?」と互いに表情を探り合う。もちろん、私が所属する会派ではIR誘致に関する具体的な議論はこれまでしていませんので、私がここで述べているのはあくまで「IRを取り巻く雰囲気を、あえて例えるならば」というレベルの話です。
これから、敢えてジョーカーを引き受ける勇気を持つ者が果たして現れるのか…。蛮勇を振るっても、文字通り道化を演じて終わるだけではないのか。今日、横浜で示された民意によって、IRを取り巻く空気の重さが否応にも増すであろうことは想像に難くありません。
・影響が読めない
現職の横浜市長が民主党(当時)推薦で初当選したのは平成21年(2009年)。翌月の衆院総選挙では民主党が圧勝し、政権交代が起きました。
果たして歴史が繰り返すのか、ということには大いに関心があります。
政治が大きく変わる局面には、有権者の怒りがあると思います。それが大きなうねりになったときに、変化が起きるのだと。
想像するに横浜では、一向に減らない新型コロナの新規陽性者数と抑圧された自粛生活への怒りに加えて、IR誘致への拒絶感が相まって、大きな民意のうねりが生じたのではないでしょうか。
自民党に籍を置く市議会議員である私は、衆議院の小選挙区でいうと福岡2区と福岡3区に関わっています。予定候補者はともに4期目を目指す若手ですが、ともに日頃から頼りにしている兄貴分であり、どんなに苦戦をしようとも全力で支えるつもりでいます。
横浜市長選の結果は、イバラの道のりを覚悟せよという世論の宣託。そう受け止め、より謙虚に、声に耳を傾けて、明日からまた、仕切り直しをしたいと思います。