16日に開かれた本会議で一般質問に立ちました。3期目の任期中で最後の登壇予定だったので、数ヶ月前から色々と準備をしていたのですが、近年ずっと気になっていた「福岡市内の地価上昇」について、さらには「天神ビッグバンのエリアにおけるオフィス供給」について取り上げました。

質問の概要が、翌17日の西日本新聞朝刊の地域面で詳しく報道されていたので、引用します。

見出しにある通り、「地価公示」で見る福岡市の住宅地価格の平均は、10年間で約1.6倍になりました。こうした地価の上昇に加えて近年は建築にかかる費用も高騰しているため、子育て世代の中には、住宅ローンで借りられる金額(一般的には年収の8倍程度が目安とも)では福岡市内で家を建てられず、福岡都市圏の糸島市や糟屋郡内、春日・筑紫野・大野城などに転出するケースが出てきているということを、私は住宅の設計や施工、或いは土地の売買に関わる仕事をされている方々から聞いていました。

このような傾向を統計的に裏付けることは現段階では難しいというのが市の見解なのですが、住宅地の価格上昇は「行き過ぎている」とか、「バブル状態にある」といった声が聞かれていることは認識してもらう必要があるので、子育て世代の流出の事例を話題にしました。

地価が上がれば当然、固定資産税の税額も上がっていきます。福岡市から見ればそれは市税収入の増加であって好ましいことなんですが、納税者の側からすれば税負担の増加です。市の決算額ベースで固定資産税収入の推移を見ると、10年で13.5パーセントの増加になっていました。福岡市の住宅地の平均的な価格上昇をもとに、土地面積100平米の家に住んでいた場合で試算すると、年間に支払う固定資産税の負担は7200円の増加。最も値上がりが大きかった場所で計算すると40100円の増加となりました。

市内で住宅の売買に関わる仕事をされている方々から複数の証言を得ていたのですが、こうした固定資産税の支払い増加に伴って、年金暮らしの高齢者の中には、年金だけでは生活のやりくりができないからと、持ち家を売って引っ越す人も出ているとのことで、このことも質問の中で話題にしました。その上で、住宅地の地価上昇の行き過ぎは好ましくないという視点で、市は抑制に向けたメッセージを発するべきではないかという私見を述べました。

誤解を招かないようにお断りをすべきことが3点あるのですが、1点目は私は住宅地の地価上昇そのものがダメだと言っているのではなくて、年金などの社会保障も含めて個人の所得がそんなに上がっていない(しかもコロナ禍と物価高騰の影響も大きい)今の状況下においては、固定資産税が高くなることによる家計負担の増加には慎重になる必要があると考えているということ。

2点目は地価公示のもとになる評価の方式が、必ずしも実際の取り引き事例や実勢価格などを反映したものではなく、多分にその時々の「空気感」の影響を受けるものであると認識しているため、この「空気感」を変えることで市内の住宅地の価格上昇には一定の抑制が働くのではないかと考えているということ。

そして3点目に、こうした「空気感」の正体は福岡市の不動産市況に東京をはじめ全国からの注目が寄せられるきっかけとなった「天神ビッグバン」などが生み出す「上げ潮ムード」だろうと思っているということ。

これら3点の認識については、いずれも質問の中ではっきりと申し上げました。

紙面に限りのある新聞記事で引用を頂いた私のコメントだけを読むと、「住宅地が高くなり過ぎたから、福岡市はどうにかせい!」という、なかなか乱暴な質問をしたように感じられたかもしれません。事実関係は間違っていません。ただ、本稿を読んでくださる皆さまには、先述の3点の私の認識をあわせてご理解を頂くことをお願いして、質問の真意をお伝えしようと思います。

質問の後半では「天神ビッグバン」に関する問題意識についても述べさせて頂きました。天神ビッグバンは、古い建築基準で建てられた耐震性などに不安のあるビルの建て替えを促進するため、天神地区の一定のエリア内で高さ制限や容積率の緩和などのインセンティブを設けたもので、既に多くの有名なビルが建て替えに向けて取り壊されるなど、目に見える成果が出始めています。

一方で天神や博多駅地区など市の中心部では、今年、オフィスの平均空室率が5ヶ月連続で5パーセントを上回ったことが報道されており、今後さらに新たなビルが建設されて新たなオフィス供給が続いた場合には、既存のビルに空きが生じるなどの「二次空室」の問題が起きないかといった懸念が、地場の不動産業界では囁かれています。

質問では、巷間でこうした懸念が囁かれていることを行政に伝えるとともに、今後はもっと「まちづくり」の視点に重きを置いた建て替え誘導をすべきではないかという問題意識を述べさせて頂きました。

天神ビッグバンの大きな要素の一つである「容積率の緩和」について、福岡市は独自の「都心部機能更新誘導方策」を設けています。例えば、「ビルを建て替える際に一定のセットバックをすることで何パーセント」、「公開空地を設けることで何パーセント」といった具合で、容積率が加算されていくのですが、市はこのようなルールを定めることで、一定の方向性に沿った建て替えを誘導しています。

私はこの中で、「まちづくり」に関連して加算される最大で合計450パーセントの容積に着目をしたのですが、都心部で慢性的に不足が指摘されている「演劇練習場」や「ホール」などの機能を設けることで得られる容積が50パーセントにとどまっていること、そして、建て替わるビルがどのような施設面での機能を備えているかに関する容積率の緩和がこのうちの50パーセントにとどまっていることを指摘し、「このままでは新しいビルにもオフィスばかりになるのでは?」という懸念を投げかけました。

新しいビルが持つ施設面での機能は、エリアのまちづくりを考えた場合に最も重要なはずです。天神ビッグバンによる容積率の緩和という恩恵は、福岡市、つまり福岡市民が事業者に与えたものであり、その恩恵は一定、市民に還元されるのが筋(すじ)なんだろうと思います。

容積率の緩和に関するルールは福岡市が独自にコントロールできますので、今後は市民の文化・芸術活動、または健康づくりなどのプラスになる機能を併設した場合の容積率の緩和をより大きくして、市民に愛される都心のまちづくりを進めることが望まれているのではないかと考えています。