最近、ヒゲにばっかり栄養が行ってる気がしている調たかしです。
去る4月12日(土)は、私の古巣であるTNCで毎週土曜日の朝9時55分から放送されている
「土曜NEWSファイルCUBE」の待機児童問題を扱うコーナーに出演してきました。
高島市長は今年4月1日時点で市内の待機児童がゼロになったと発表しました。
直近の4年間で6000人分の受け入れが可能な保育所整備を進めたことなど
取り組みが一定の成果を挙げたと言うことができるでしょう。
ただし、風営法の対象となるラブホテルやパチンコ店の近隣にまで
保育所を作ったことなど、決してほめられたものではない保育所整備もあったので
その点だけは今だにもって残念でならないのですが・・・。
一方で、発表を受けてのメディア報道では、高島市長の待機児童ゼロ宣言に
疑問を呈する内容が多く見受けられるようになりました。
キーワードは未入所児童であり、私が出演したコーナーも
1122人にものぼる未入所児童の実態に焦点をあてたものでした。
未入所児童とは、自宅から20~30分の範囲に他に入所できる保育所があるものの
特定の保育所を希望して入所待ちをしている児童のことです。
例えば、子どもを入れたいと思っている保育所に入園希望を出して断られた場合に
行政からは通園が可能な他の保育所を紹介されますが、
それを断った場合には待機児童ではなく未入所児童という扱いになるのです。
問題なのは行政が通園可能だと勧める他の保育所が、
「とてもじゃないけれど送り迎えをしながら仕事に行けるような立地ではない」
というケースがあるということです。
番組スタッフの方が事前に取材したVTRでは、中央区にお住まいの
あるご夫妻の事例が紹介されていました。
自宅のすぐ近くにある複数の保育所がいずれも一杯だったため、
行政から別の2か所の保育所を勧められましたが、そのうち1か所は
朝のラッシュ時には片道で一時間もかかる場所だったという事例でした。
奥さまはこの園に子どもを通わせながら通勤することが不可能なことから、
現在は仕事を辞めて自宅で保育をされているそうです。
このお子さんも、行政が勧めた保育所を断ったので
待機児童ではなく未入所児童扱いになります。
待機児童と未入所児童で行政の対応は全く違います。
子どもが待機児童となった場合は、その子を無認可の保育所に預けたとしても
所得に応じて行政から金銭的な補助を受けることができます。
しかし、未入所児童にはこうした補助はありません。
未入所児童と判断された子どもは保育サービスの網から漏れてしまうのです。
こうした未入所児童の数が1122人にのぼるというのは、どういうことか。
先ほど述べた中央区のご夫妻の事例のように、通園不可能な保育所を勧められたあげくに
「お宅の子どもは待機児童ではありません」と断じられてしまったケースが
他にも山ほどあり得るということだと、私は考えています。
福岡市から見捨てられたと憤り、悲しんでおられる親御さんたちが
大勢いらっしゃることでしょう。
出演した番組では多くのコメントを求められた訳ではありませんが、
私が特に申し上げたのは「今回の待機児童ゼロには何の価値もない」ということです。
1122人の子どもとその保護者が、満足できる保育サービスを
受けられていないというのが福岡市の実態なのであり、
待機児童問題が最終的に解決したわけではないのです。
ところで、待機児童ゼロと発表した高島市長ですが、
ご自身の実績になるという思惑が少なからずあったのではないかと推測します。
しかし、かえって風当たりが強くなる結果を招いたように感じます。
待機児童か未入所児童かを判断するのは行政の勝手ですから
数字をゼロにすることを優先した無理筋な入所指導が、
あちこちで繰り返されたのでしょう。
「昨年までは待機児童とされたケースが、なぜか今年は未入所児童にされてしまった」
という声も聞きます。
不条理に対する怒りが、行政のトップである市長に向くのは無理のないことです。
待機児童ゼロは、本当にゼロではない。
ゼロではないから、やらなきゃいけない。
まずは今回の待機児童ゼロ宣言に対して、納得がいかないと思っておられる
当事者の声を行政に届け、行政の入所指導の進め方が適切だったのかを
検証していくことが、取り組むべき仕事だと思っています。