今朝の西日本新聞の社会面に、気になる記事がありました。「時短の波 漁業のむ」「高級魚価格 大幅に下落」。
記事によると、飲食店が軒並み時短営業または休業をする中で、冬場の高級魚の需要が落ち込み、価格が大幅に下落し、漁業生産者や仲卸の事業者などから悲鳴が上がっているようです。「燃料代の一部でも行政に補助してもらえると、漁師も助かるのですが…」という漁業生産者のコメントが紹介されています。魚価が落ち込む中では、燃料代などの生産コストもリスクになるので、いつものようには漁に出られないということでしょう。文字が読める程度の大きさで記事を転載します。
漁業生産者、仲卸など、飲食店の向こう側にいる事業者に対して、時短営業に伴う支援は十分に行き届きません。福岡市が観光やMICEで支持を集める大きな要因の一つに魅力的な食があり、魚食文化は中核をなすものと言えるでしょう。生産者の置かれる苦境は、福岡のまちの大事な文化の危機でもあります。全国的にも珍しい「農林水産局を持つ政令市」である福岡市は、いまこそ矜持を示して生産者の支援に乗り出すべきだということを、自由民主党福岡市議団では強く要望しています。
さて、先日来、緊急事態宣言に伴う様々な課題について、所属会派の動きや私個人の見解などを投稿してきました。きょうは視点を変えて、福岡市に今どのくらいの金銭的な余力があり、今後の予算編成でどんなことが想定されるのかについて、現時点ではかなり推測を交えることになりますが、書いてみたいと思っています。
まずは、福岡市の金銭的な余力である、「財政調整基金」が過去1年でどのように推移したかということです。財政調整基金は、各年度ごとの福岡市の事業の余った予算などを積み立てておいて、今回のコロナ禍のような事態もそうですが、大きな災害が起きた際や、お金が足りないときなどに使えるようにしておこう、というもので、言うなれば「市民の貯金」にあたります。
令和2年度のお金の出入りを簡単にまとめた表を、財政局の資料をもとに作成しました。(基金の残高PDFファイルが開きます)
令和元年の決算時点で、基金には341億円のお金がありました。令和2年度の当初予算を編成する段階で55億円を取崩し、その後はコロナ対策の福岡市独自施策のために4月補正で106億円の取崩し、5月補正で35億円、9月補正で36億円をそれぞれ取崩しています。令和2年度の財政運営とコロナ対策のために、総額232億円の貯金が使われています。
一方、年度中に国が1次補正、2次補正を行い、その度に福岡市にも臨時交付金が分配されました。1次が28億円、2次が101億円でした。これらのうち4月補正で31億円、6月補正で51億円を財政調整基金に戻したほか、12月議会では様々な事業の見直しによって捻出した5億円を戻すなど、総額89億円を再び財政調整基金に積んでいます。
232-89=143(差し引きの取崩し額)
341-143=198(今現在の財政調整基金の残高)
以上が、市民の貯金である財政調整基金の現状です。コロナ関連の対策事業の支出が響き、今年度末の見込み残高は198億円にまで目減りしました。
先日来、コロナ関連の経済対策で30億円の余り予算があることについて書いてきましたが、現状、そのお金はこの「貯金」の中ではなく、今年度中に使うお金が入った財布(一般財源)の中にあります。ただし、議会での議決を経て、事業者支援などに用いられる「商工費」の名目で、一度「小分け」にされていますので、その範囲内に限りすぐに使える性質のものになっています。先日来、時短要請を受けていない事業者への支援に直ちに使うように会派として強く求めているのですが、レスポンスが遅いことは残念に思っています。ともあれ、これは先程の198億円の基金残高とは別の扱いなので、念のため付け加えます。
一方、先日報道で一部明らかになった、福岡市の令和3年度予算の見通しですが、地場中小事業者の資金繰りを支える商工金融資金が大幅に積まれ、始めて一般会計の規模が1兆円を超えるとのことです。年々増加を続ける社会保障の関連経費は微増と見られるようです。そこで、商工金融資金を除いた一般会計の支出はほぼ令和2年度並みと仮定をし、以下、報道された数字を参考に、来年度の福岡市の台所事情を試算してみます。
市税収入→3130億〜3230億(令和2年度予算では3397億)
税収の減は270億円から170億円。7年ぶりの減収見込みです。
一方で、市税収入が下がることで、国から措置される財源である地方交付税は増えます。一般的には市税収入の減少分の75パーセントが、交付税措置されるというのが基本的な考え方になっており、単純計算をすると、来年度の市税収入の減に対応する地方交付税の増加は、130億円~200億円程度と推計することができます。
「その他の収入も支出も、あまり今年度と差がない」という仮定のもとに来年度の福岡市の台所事情を推測すると…
市税収入(令和2年度比) -170億円 ~ -270億円
交付税(同) +130億円 ~ +200億円
差し引き -40億円 ~ -70億円
上の「差し引き」で示した範囲で、お金が足りないことが想定されます。分かりやすい市税収入と交付税だけを並べていますので、あくまで参考です。そして、このようなときに活用されるのが財政調整基金なのですが、福岡市ではどんなに市税収入が好調であっても、毎年度の当初予算を組むために数十億円単位で取崩しをしています。コロナ禍の前に当初予算が固まっていた令和2年度も、55億円を使いました。こう考えると、令和3年度の予算編成のためには、上記の不足分(40~70億円)を補い、かつ例年通りの取り崩しをしなければなりませんので、財政調整基金から100億円程度を出さなければいけないことに…。現在の残高が198億円ですので、次の当初予算を組んだ後には基金の残高が100億円を割り込むことも覚悟しておかないといけません。あくまでざっとした計算であることは重ねてお断りをしておきますが。
令和2年の3月末に341億円あった貯金が、令和3年の4月には100億円を切るかもしれない。これが福岡市の台所事情です。1年前には一杯だった米びつを覗いてみたら、底が見え始めていた。そんなところでしょうか…。
こうした状況を見たときに、2つのことが言えるのではないかと思います。
まず1つは、令和3年度において、もし仮に緊急事態宣言を伴うような感染再拡大が起きてしまったら、福岡市が去年の春先のように、市民生活や地場経済を支えるために素早い支援を実行することは難しいだろうということ。今現在も2度目の緊急事態宣言下にありますが、これをもう一度繰り返すわけにはいかないのです。
もう1つは、きょう国会を通過した1.5兆円の臨時交付金のうち、福岡市に配分されるものは、実質的には福岡市がコロナ対策に使うことができる最後の、まさに虎の子の財源になるだろうということ。国からおりてくるお金は、今回の臨時交付金までしか見えていないのです。
これから2月17日開会予定の市議会2月定例会に向けて、コロナ対策の補正予算の編成が進められると思いますが、我々議会の側もかつてなく重要な局面での予算審議を迎えていくことになります。背筋の凍るような緊張感です。この緊急事態宣言下、全く気を抜いたことはないつもりですが、それでも改めて気を引き締めて、市民の負託にこたえる仕事をしなければと思います。