物もちは良い方だと思います、調たかしです。一番古い部屋着は中学生の頃から履いている破れジャージであります。

3年半連れ添った折り畳み式携帯電話、いつも通話専用で使っている、いわゆる「ガラケー」を、本日、機種変更しました。最近、ガタがきてショートメールやEメールを開こうとする度にフリーズするようになっていました。

そんな中、「いよいよガラケーの新製品が今後リリースされなくなる」という噂を聞き(巷の噂です。真偽の程は不明)今のうちに変えておかないとスマホを2台持つハメになる(現状、通話用ガラケーの他にデータ通信用のスマホを持ち歩いている)という焦りもあって、今日、機種変更に踏み切ったのでした。

スマホの2台持ちがなぜ嫌かというと、「スマホで通話すること自体に何となく抵抗があるから」。薄っぺらい割に重たいし大きい。高価なくせに落とせばすぐに画面が割れる。

この点、通話特化型の折り畳み式携帯は、小さくて軽くて、ちょっとやそっと落としてもビクともしない。その上、総じて価格も安い。型は古いが時化(しけ)には強いとくれば、まるで兄弟船のような抜群の安定感があるのです。

そもそも、ガラケー(ガラパゴス携帯)などという呼称はおかしくはなかったか?ビジネス用語で「淘汰されていく商品やサービス」を指して「ガラパゴス化する」というらしいのですが、強度、価格、シンプルな機能性、いずれもスマホに引けを取らない長所がある折り畳み式携帯なのに、あんまりな言われようではないかと、ユーザーの一人としてずっと、モヤモヤしたものを抱えてきたのです。

そんなことを考えながら、前回の機種変更以来で訪れたauの携帯ショップ。電話予約で用件は伝えていたので、早速、機種を選ぶことに。とは言っても、3年半前でも既に少なかった変更先の選択肢はたった3つにまで減っていて、いわゆる普通のガラケー1種類と、あとは、ご高齢のユーザー向けに文字表示を大きくするなどの配慮がなされた、「らくらくホン」が2種類のみ。

間もなく齢43にならんとする春、未だかつて老眼の所見を認めない私としては、当然、普通のガラケーの一択であり、あとは「何色にするのか」だけが問題でありました。

私「普通のガラケーは、何色がありますか?」

店「普通のガラケーは、在庫がございません」

私「えっ!?」

店「他のお店でも、割と同じみたいです」

私「マジですか!?」

まさかの展開でありました。ガラケーの衰退、そこまで行ってたんですかと。

思えばご高齢のユーザーなどが、ガラケーからスマホに買い替える「スマホデビュー」という現象は、既に流行の最盛期を過ぎたように思われるのだが、そんな中、私の目の前に「らくらくホンデビュー」という想像もしなかった事態が、現実味を持って迫ってくる。

店「スマホは持たれないんですか?」

やはり、きた。身の危険を察知した私は咄嗟に、お店の方のセールストークを抑止するに足るプレッシャーを全身から放ったのであります。その様子に効果音を付すなら「ゴゴゴゴゴ」でしょうか。

そして、熟考すること数秒。

「らくらくホンを買うと言えば、お店の方から『飛ばし用の携帯じゃないか?』などと不審に思われてしまわないだろうか」(※飛ばし用の携帯とは、犯罪行為などに用いるために他人に使用させる携帯端末のことです)。

「そもそも、通話をしているときに、周囲の好奇の目に晒されることがないだろうか。」

今のガラケーですら、なぜか通話中に視線を感じる気がするのに。一般的には高齢のユーザーをターゲットとした携帯を使用すれば、現状よりも更に目立ってしまうことは必定。

「しかし、いま決断しなければスマホへの切り替えで押し切られてしまう。抗うことはできまい。」

3年半連れ添ったガラケーを握る手に、思わず力が入りました。是非もないとは、このことでありましょう。意を決し、しかしながら至って平静を装いつつ、私は店員さんにこう申し上げました。

「この、らくらくホンをください。銀色のやつを。」

すると店員さんは短い沈黙の後、わずかに困惑の表情を浮かべながら、こう申されました。

「こちらのお色は、シルバーではなくシャンパンゴールドになります。よろしかったでしょうか?」

「知るかいな、そんなん!」と、喉まで出かかったツッコミを慌てて飲み下した私。その胸中では、自分に打ち克った今日という日を祝福する小さな喜びと、それよりもはるかに大きな敗北感がグルグルと巡っていたのです。

らくらくホンには、歩数計が付いていました。これからは健康に気を遣って歩こうと思います。また、頻繁に電話をかける番号を登録してワンタッチでかけられるように、3つのボタンが付いていました。

1のボタンは、私の個人事務所、2は所属会派の控室。残る3のボタンをどうするか、それが目下の懸案になっています。私にとって恐らく最後のガラケー。思い出を深く心に刻むために、今日のできごとをブログに投稿して記録します。