日本時間の15日、アフガニスタンではタリバン勢力が首都カブールを制圧し、『政権を樹立』したというのか、または『政権を掌握』したのか、現段階でどのような表現が正確なのかは分かりませんが、とにかく我が国がアメリカや他の西側諸国とともに連携してきたガニ大統領が、国外に逃れたことは間違いないようです。
今日になって、現地の日本大使館職員など12名がイギリス軍機で無事に国外に退避したことが一斉に報じられました。我が国とアフガニスタンの友好や在留邦人の保護のために、政情や治安が極めて不安定な彼の地で働いてきた人々の無事が報じられたのは喜ぶべきこと(朝日新聞の報道では『日本大使館や国際協力機構(JICA)事務所で働いてきたアフガニスタン人のスタッフやその家族が、国外に退避する見通しが立たないまま、アフガン国内にとどまっている』とあり、いくばくかの後ろめたさを感じなくはないのですが)だと思います。しかし同時に、どうしても気になる情報が個人的にはまだ追えていません。
それは、「大使館職員以外のアフガン在留邦人の国外退避が完了したのかどうか」です。一部報道では、「国際機関職員などアフガニスタンの在留邦人のうち、希望者は国外に退避させた(毎日新聞)」とありますが、ならば「政府や外務省が全ての邦人の安否を確認できているのか?」ということに関して、明確な情報が現段階では見当たりません。
気になったので、外務省のホームページで調べてみましたが、アフガニスタンの在留邦人の数については、公開されている直近のデータを見ても情報がありません(下記は令和2年10月の在外邦人の国別データへのリンク。アフガニスタンについては記述なし)。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100102592.xlsx
懸念されるのは、「正確な在留邦人の数が示されていないということが、つまりは何人いるのか正確にはわからない」ことを意味するのではないかということです。これに関心を寄せているのは私だけではないと思います。※アフガニスタン及びイラクの在留邦人数については、安全確保の観点から少なくとも過去数年、公表されていないようです(8月18日加筆)。
国内では感染爆発の局面にあるコロナ禍に加えて、九州や西日本一帯を中心に大雨による災害が発生している中で、日夜不安に怯える人々のことがまずもって案じられる情勢です。課題山積の状況ではありますが、政府にはいち早くアフガン情勢に関する正確な情報を明らかにしてもらいたいと思います。
故・中村哲医師がそうであったように、現在、アフガニスタンに在留している邦人のほとんど全ては恐らく「人道的な使命感」を背負った方々ではないかと推測します。高尚なる精神に衷心からの敬意を表し、心より無事を祈ります。
一方で、返す返すも残念なのは、邦人の国外への退避をイギリス軍機に頼ったという事実です。感謝の気持ちを忘れてはいけませんが、それにしても「いやあ、よかった」「イギリス軍の皆さん、ありがとう」で済ませられる問題ではないはずです。恐らく、現在の法整備では、自衛隊機がカブール空港に飛んで、窮地にある邦人を救出するという「当たり前のこと」が容易にはできないのでしょうし(自衛隊法84条の3及び4に、外務大臣の要請による邦人保護等の規定があるようですが)そのことこそ問題なのではないかと思うのです。
タリバンによるアフガン全土の制圧は、世界中を見渡せばいつどこで今回のような危機や政変が起きても不思議ではないということを如実に物語っていると思いますし、だからこそ、我が国は引き続き専守防衛を旨としつつも、邦人の保護やそれに準じる人道的な目的を果たすため、自衛隊が取り得る対処の幅を広げてゆくべきではないのかということを、改めて考えさせられました。
アフガン国内を恐怖と混乱に陥れているタリバン勢力の銃と刃は、彼の国の人々にとどまらず、私たち日本人の喉元にも突きつけられたように感じます。