先月末に投開票された衆院総選挙(定数465)の結果、読売新聞によると憲法改正に前向きな「改憲勢力」が352議席となり全体の4分の3を超えました。

内訳は自民党261、公明党32に加え、今回躍進した日本維新の会が41、国民民主党が11。これに保守系の無所属議員などを加えた数字です。

国会が憲法改正の発議をするためには衆参両院の憲法審査会で過半数の議決を経て、その後に両院の本会議で「3分の2」以上の賛成が必要になりますが、衆院では前回、前々回の総選挙に引き続きこの要件をクリアしたことになります。

一方の参院(定数248)ですが、2年前の参院選直後の報道によると改憲勢力は160議席で、わずか4議席ですが当時は3分の2に届きませんでした。しかしこの時点では安倍政権下での憲法改正に反対の姿勢を示していた国民民主党(参院会派で15議席)は改憲勢力にカウントされていませんでしたが、現在の考え方は変わっているようです。

今回の衆院選で議席を伸ばした国民民主の玉木代表は、憲法審査会で改憲に向けた議論を加速させるべきだという趣旨の発言をするなど、衆院選後のメディアの取材に対して改憲に向けた意欲を明確に示しています。国民民主の参院での現有議席も改憲勢力に加えるならば、現在は参院においても憲法改正の発議をすることは可能なんだろうと思います(令和3年の通常国会で成立した改正国民投票法の付則の解釈をめぐって、『改正法の施行から3年は国民投票ができない』といった主張も護憲勢力側にはあるようですが…)。

報道によると明日9日には維新と国民民主の幹事長、国対委員長が改選後初めて会談するようですが、維新の松井代表は2日の会見で「来年の参院選と同一日で改憲の国民投票を実施すべき」という趣旨の発言をするなど具体的なスケジュール感にも踏み込んでいて、今後改憲に向けた「維国連合」が存在感を増すことになるとの観測が報じられています。

自由民主党は昭和30年(1955年)の結党に際して「現行憲法の自主的な改正」を掲げて以降、憲法改正を党是としてきました。政権外の勢力が改憲の議論に前向きで、しかも数の上でも衆参で優位に立つ今の状況がまさに千載一遇の好機であることは論を待ちません。

一方で維国連合の動きには来年の参院選をにらんで憲法改正をテーマに存在感を増し、支持を拡大したいとの思惑も透けます。ただ単純な足し算の結果通りに物事が進むとは考えにくいところもあります。

やはり重要なのは岸田首相が総裁選でも意欲を示し、自民党が今回の衆院選でも公約に明示した「早期の憲法改正」を実現するために、政権がどれだけ本気度を示してイニシアチブを発揮できるか。つまりは改憲勢力がまとまることができる具体的な改正案の成案を得るために、自民党がいまどれだけ汗をかけるかだと思います。

目下の国政の最優先課題は言うまでもなくコロナ禍の困難から国民生活と経済を守ることにありますが、憲法への緊急事態条項の明記は感染拡大の防止をより強力に押し進める目的においても真剣かつ早急な議論が必要な課題です。

個人的には、来年の参院選が憲法改正の具体的な成案とともに国民の審判を仰ぐものとなることを期待しますし、その場合には恐らく護憲勢力から衆参同一選を求める声もあがるのではないかと思うのですが、改憲を党是とする自民党は乾坤一擲(けんこんいってき)の気概をもって逃げずに受けて立つべきだと考えます。