最近は思索にふけるあまり、夜更かしが多い傾向にあります、調たかしです。今回は久しぶりに議会報告をと思います。

17日の本会議で、一般質問に登壇しました。最も時間を割いたテーマは「食料安全保障」です。

私たちは食べたいときにいつでも卵を買うことができます。96パーセントは国内の養鶏場で採卵されており、輸入はわずかです。しかし卵を産んでくれているニワトリは、実はほとんどがヒヨコのときに空を飛んでいます。アメリカなど海外からの空輸で、その割合は実に95パーセント前後にのぼります。

ニワトリが食べるトウモロコシなどの飼料も約90パーセントが輸入です。周囲を海に囲まれた我が国で、万が一にも海上・航空の輸送が止まるような事態になれば、卵はすぐに食卓から姿を消します。

こうした万が一の事態にあっても、国民が飢えることがないような食料の安定的な確保に努めることが必要だとして、最近は「食料安全保障」というテーマが注目を集めています。

この食料安全保障について福岡市が今後どのような取り組みをすべきなのかを論じる目的で質問をしたのですが、非常に裾野の広いテーマでもあり、大きく分けて以下の4点に絞り、意見を述べました。

①現在の農地を維持することの重要性

②農地と作り手を守るための生産者への支援

③学校給食を活用した地産地消の推進や有機農業の育成

④地方の消費者行政の役割

以下、項目ごとに質問の趣旨を要約します。

①現在の農地を維持することの重要性

日本の食料自給率は令和元年で38パーセント(カロリーベース)となり、過去最低の水準にあります。これほどまでに自給できていないのに、各地の農村地帯で耕作放棄地が広がり続けています。

ウクライナにおける戦争の影響でヨーロッパ有数の穀倉地帯からの小麦の供給がストップしました。これが一つの例と言えるのですが、食料の輸入はある日突然に途絶えかねません。いざというときに自国で作物が育てられるよう、田畑は常に良好な状態に維持されることが重要です。

②農地と作り手を守るための生産者への支援

作るのをやめてしまう営農者が増えれば、耕作放棄地がさらに広がります。しかし、現状では作っても所得が増えず営農者の意欲はなかなか上がりません。例えば米の生産ですが、1俵(60キロ)の平均の生産原価は約15000円なのに対し、スーパーでは10キロで3千円を切るような(つまり1俵で18000円以下)のものが「ざら」に売られています。

日本では米の価格を維持するために、いわゆる「減反」が行われてきましたが、稲作から麦や大豆、そばなどへ転作をしてきた農家への補助金が、今年度から切り下げられることになりました。これらの作物も出荷価格が特に高いわけではないので、補助金なしでは採算割れしてしまう恐れがあります。

アメリカに目を向ければ、コロナ禍で打撃を受けた農家への所得補償として、トランプ政権時代だけでも約4兆3千億円ものお金を支給しました。またウクライナ戦争以降では約6500億円もの資金を出して小麦やトウモロコシなどを買い上げ、国内で配るだけでなく世界に7億人いるとされる飢餓人口に対して、人道支援目的で送り出しています。言い換えればアメリカは、これだけのお金をかけて余剰生産能力の確保、つまりは食料安全保障をやっていると言えます。

日本の農業は補助金だらけだということが、ときに批判めいて言われますが、我が国はケタ違いの補助金を出しているアメリカの例に倣って、農家への直接支援をもっと増やすべきだと思います。

なお、田畑の耕し手はいわゆる伝統的な農家だけではなく、最近では法人経営や農副連携などの主体も重要さの度合いを増しています。新たな担い手として積極的な支援と育成に努める必要があります。

③学校給食を活用した地産地消の推進や有機農業の育成

福岡市における学校給食の食材の調達は、学校給食公社が一括して担っています。公社は過去には学校給食センターの運営など調理業務も担っていましたが、現在は調理部門は民間に委託され、調達部門だけが残っています。

食料安全保障の観点では、輸入農残物の国産への切り替えを促進する必要がありますが、学校給食は使用する食材の量が多く、また安全なものを子どもたちに食べさせたいという共通の願いに基づいて運営されることから、公社には一層の地産地消の推進をはじめ地場生産者の支援などの政策目標に立脚して、調達にあたって欲しいと考えています。

一方で農水省が去年策定した「みどりの食料戦略」では、2050年までに我が国のすべての農地の25パーセントを有機農地へと転換して行くことが掲げられました。福岡市の全農地は約2400ヘクタールなので、今後28年の間に600ヘクタール、年間では20ヘクタール以上を有機農業に切り替えて行く計算になります。かなり大変な目標です。

給食公社にはこうした有機転換の政府目標に対してもしっかり反応して、地場有機農業の発展に寄与してもらいたいという意見を述べました。

④地方の消費者行政の役割

海外から輸入される農産物には、防カビや防虫などの目的で収穫後に農薬がかけられているものがあります。いわゆるポストハーベストですが、これらの農薬の中には日本国内の農業では使用が禁止されているものも含まれます。しかしながら、輸入されるときには「食品添加物」扱いになるので問題にはなりません。

食料安全保障の議論では輸入農産物の国産切り替えをいかに進めるかが大きなテーマになりますが、この点で大きな力を持っているのは国ではなく消費者であるはずです。国には国同士の貿易に関する取り決めなどがあり、ことさらに先ほどのポストハーベストのような問題について積極的な情報発信をすることは望めないだろうと。しかしながら、それを地方の消費者行政がやってはいけないという理屈はありません。

食料自給率が38パーセントと低迷する我が国で、輸入農作物由来の食べ物が普段の食卓に並ばない日はありません。これらの食べ物がどのような種・肥料・農薬を使って生産されたのか、詳しい情報を知れば知るほど、日本人は国産のものをより多く選ぶはずです。

消費者行政もまた食料安全保障を考える上での重要な要素になるものと考えています。

以上、かなり長々と書きましたが、国ならびに自由民主党において食料安全保障の議論が盛んになってきたことは歓迎すべきことです。農林水産局を持つ福岡市が国の動きを先取りして市内の農地や営農者を守り、有機農地への転換を進め、食料自給率の向上や供給の安定化に努めることで、いざというときに市民を飢えから守ることができるよう、政策提言に取り組んでいきたいと思います。