人生初の「肉離れ」を経験しました、調たかしです。先週水曜日の消防団の訓練途中、全力でダッシュをしたところ左足のふくらはぎに強烈な違和感が…。以後2日間は歩くのもやっとなくらいの痛みに見舞われました。準備運動をもっと入念にすべきだったと反省するところがあります。皆さんもどうぞお気をつけ下さい。
さて、きょうは参院選の論戦でも話題になっている物価高騰について、思うところを述べたいと思います。6月15日に閉会した通常国会では、(報道で知る限りですが)終盤になって野党から昨今の物価高を「岸田インフレ」などと批判する声が上がりました。たしかに最近は小麦製品、食用油や様々な野菜類、ガソリンなど、生活に欠かせないものが軒並み値上がりしていて、市民の日常生活に及ぶ影響は決して小さくないと思います。
一方で、岸田インフレというレッテル貼り(と今日はあえて断じます)に対しては、あまりにもナンセンスだと強く感じてきました。理由は2つあって、一つはそもそも我が国の物価は諸外国の高騰ぶりと比較してもかなり抑制されていること。もう一つは昨今のような悪性のインフレを政策で抑えることは基本的には不可能だと思われることです。
世界的な価格高騰の流れはウクライナ有事以降に加速したことは間違いありませんが、4月にもこのブログで書いたとおりアメリカでは既に昨年末には消費者物価指数が前年比で7パーセント台の上昇を記録していました。今年5月は8.6パーセント。一方の日本は5月の総合指数で2.5パーセントです。イギリスは9.1パーセント、イタリアは7.3パーセント、フランスが5.1パーセント、ドイツが7.9パーセントと、先進諸国はいずれも日本の2倍~3倍の水準。参考までに隣国である韓国をみても5.4パーセントでした。これらの数値を客観的にみても、我が国の物価上昇は諸外国と比べて抑制されていることが分かります。
この間の政府の取り組みですが、原油価格を落ち着かせるためにアメリカが3月末に備蓄の放出を表明した際、岸田政権はすぐさまに同調することを決め、初めて国家備蓄の放出に踏み切りました。直後に国際的な相場は一時的に落ち着きました。さらには今年1月からガソリンの価格高騰を抑えるための元売りへの補助を行なって、1リットルあたり5円→25円→35円と、補助の上限も断続的に増額してきました。この補助自体は化石燃料の消費を政府が促進しているようでもあり、脱炭素の流れを意識したときにいつまでも続けてよいのかという全く別の議論の余地がありそうですが、少なくともこうした財政出動を政府が行ったことによって、消費者物価が上がる要因の1つである「物流コストの上昇」が一定程度抑えられたことは間違いないと思います。
ただし、我が国の消費者物価指数の上昇が比較的に落ち着いていることの全てが政府の対策の成果だと言っているわけではありません。多くは民間企業の「価格転嫁控え」によるものと見るべきでしょう。
朝日新聞デジタル版で27日に報じられたところによると、今年5月の企業物価指数は前年比でプラス9.1パーセント。消費者物価指数(前年比プラス2.5パーセント)とは6.6ポイントもの差があります。つまり民間企業が原材料などの物を売り買いする価格は先進諸国の消費者物価なみの割合で上がっているのに、我が国では消費者物価の上昇が抑えられているのです。普通に考えれば異常な事態なんですが、この差は一体何なのかと想像を働かせればおのずと、民間企業が価格高騰を商品やサービスに価格転嫁せず、利益を犠牲にしながら踏ん張っている姿がイメージできます。望ましくないことですが、中には従業員に支払う賃金を削ってまでも値上げをこらえているケースだってあるでしょう。諸外国と我が国との差の大部分は、民間企業のマインドにあるのだと思います。
だからこそ「岸田インフレ」などというレッテル貼りは実態を見ないナンセンスなものだと考えるのです。今現在の我が国の物価は、本来ならもっと上がっていておかしくないのに抑制されています。民間の努力で「日本ではまだ本格的なインフレは起きていない」のだから、政治が現状のみを捉えて水のかけあいをすることには全く意味がなく、むしろ議論の焦点は今後どうやって国民の生活を守るかの一点に絞られるはずです。
そして、そもそも論になりますが、欧米先進国や隣国のいずれの物価の状況を見ても分かるように、昨今のような「悪性のインフレ」、つまりは資源や穀物などの価格高騰によって引き起こされるインフレについては、政策による抑制はさほど効かないのだと思います。インフレは普段なら、好景気・経済成長により需要が供給を上回る結果に起きるもので、これが加熱した場合には政策金利を上げて貨幣の流通量を少なくすることで抑制が図られるものです。アメリカでは今回のインフレの大きな要因にコロナ禍からの景気の急回復があると言われていて、セオリー通りに政策金利が引き上げられましたが、事態が落ち着いたという話は聞こえてきません。今回のようなタチの悪い価格高騰を相手にして、全体を抑え込むような対策は取れないのではないかと思います。
コロナ禍やウクライナ情勢、さらには異常気象などの影響を受けて世界規模で棄損されたサプライチェーンを回復したり、または別の供給手段を確立すること以外に、物価を元の水準まで落ち着かせる手段はないはずです。
いま国内の情勢をみて論じるべきことは、踏ん張っている民間企業が力尽きる前にいかに価格転嫁を進めるか、それと同時にいかに賃金など家計収入の底上げを図るかの方策であって、お金を投じて価格を抑えるための努力は生活必需品の中でも農水産物をはじめとする食料品の価格上昇を防ぐこと(つまりは国民を絶対に飢えさせないこと)へと、徐々に的を絞ってゆくべきだと思います。これから日本は過去30年にわたって停滞してきた物価の上昇をある程度許容しつつ、同じように停滞してきた賃金の上昇を実現することが求められるのではないでしょうか。
今回の参院選は私が所属している自由民主党はもちろん、さまざまな政党が賃金上昇を公約に掲げていて、ここが今回の選挙の注目点なのではないかと思います。このブログを読んでくださる皆さんにはぜひ、政策を読み比べて頂いて投票に足を運んで頂ければと思います。